不動産を購入する際は、条件をシビアにチェックし吟味するため、建築条件にまつわるトラブルは少ない傾向にあります。ですが、相続の場合、手にして初めてチェックするため、思わぬトラブルを抱えていることも少なくありません。今回、Kさんが父親から相続した不動産は「建築不可物件」であり、扱いには苦労しました。ここでは、相続した不動産が再建築不可物件だった場合について、Kさんの例を見ながらお伝えしていきます。

■父親の遺産は奥まった一軒家

Kさんは奥さんとともに、実家からほど近くの賃貸物件に住んでいました。母親は早くに亡くなり、父親が実家で一人暮らしをしていましたが病気で急逝。一人っ子なので、遺産はすべて相続することになりましたが貯蓄などはあまりなく、メインは実家という状況です。利便性のいい地域であり、住み慣れた場所なので取り壊して新築を建てるのもいいと思い、工務店に相談したところ「再建築不可物件」であることが発覚しました。確かに、公道に出るには小道を通っていかねばならず、3方をほかの家の屏に囲まれた奥まった場所に立っています。工務店の担当者は、
・取り壊したら二度と建築をすることができない
・できるのはリフォームのみ
・通常よりも工事費用が高額になる
といった再建築不可物件の特徴を教えてくれました。
試しにリフォームの見積もりをとってみたところ、30坪で2000万円とかなり高額なものに!「リフォームの広告には坪20万からと書かれているのに」と、驚いているKさんに担当者は、
・小道が細いため重機を入れることができず、手作業に頼るほかないため、期間が長く人件費がかさむ
・狭いため、近隣への格段の配慮が必要
・地盤がゆるい可能性があるので地盤調査も必要
と、高額になる理由を教えてくれました。「リフォームに2000万円掛けるくらいなら新築のほうが…」という奥さんの声に我に返り、よく検討することにしたのです。

■リフォーム?売却?

リフォームに2000万円も掛かるのは、狭い小道を重機が通ることができないことで工事期間が長く、人件費が高額になることが大きいですね。また、現在の建築基準法のない時期の建築物なので、地盤がゆるいことも多く、こちらも検査は必須。改良が必要と判断されればさらに大きな金額が上乗せされます。土地の評価は周囲よりも低く、建物の価値もほとんど失われているということで、固定資産税は低く抑えられるというメリットはあります。しかし、家は定期的に外壁塗装などの手入れが必要であり、そのたびに高額な支払いが必要となればそのメリットも霞んでしまうことでしょう。奥さんもこの点が引っかかっており、できれば違う場所に購入したいと考えています。できれば手放したくないと考えていたKさんですが、家が少しでもきれいなうちに売却することで合意しました。

■空き家にできない訳

Kさんは売却に同意し、3ヶ月後無事に買い手が見つかり手放すことができました。この売却益を頭金に駅に近いマンションを購入し、新生活をスタートさせることができましたが、誰もがスムーズに再建築不可物件と向き合える訳ではありません。実際、最近築不可物件の場合、新築できないだけでなく、住宅ローンを組むのが難しいなど購入に踏み切れないポイントが散見されます。買い手が現れないなど様々な原因で、空き家になっている最近築不可物件も多くみられますが、時が経つほど売れにくくなるため注意が必要。人が住まなくなると、害虫や雨漏り、湿気によるカビなど家は途端に傷んでしまうのです。最近築不可物件なので、どんなに劣化しても建物を壊してしまうことで、さらに価値が下がるためNG。中には半壊状態のものや、浮浪者や動物が住み着いてしまうケースも。これまでは見過ごされてきた放置された空き家ですが、2015年に制定された「空家等対策特別措置法」によって前述のように近隣の方の生活に深刻な影響を与えると判断された場合、罰金や行政執行が行われます。さらに、これまで優遇されてきた固定資産税も更地と同じ額を支払うことに。遺産相続で再建築不可物件を手にしてしまった場合は、できるだけ早く対策を立てることをおすすめします。

■専門家に売却を

不動産の専門家である不動産業者にも、得意分野と不得意分野があります。再建築不可物件は特殊な物件なので、知識が豊富で売却ルートのある業者に依頼することが、好条件で売却する一番の近道です。また、空き家をできるだけ良い状態を保てるよう、決断は早めにするのが吉。まずは相談だけでも、特定空き家にならないための一歩を踏み出しましょう。